Sさんは、私立文系コースの一浪生である。中・高一貫教育の都内の女子校に通っていた。几帳面で、勉強はもちろん、クラブ活動や生徒会活動も真面目にこなし、成績も常に上位だった。ただ、高二ぐらいから生理痛がひどく、鎮痛薬を服用して何とかしのいでいた。いつも生理がくるのが憂うつたった。昨年の入試では私大の経済学部をいくつか大学受験したが、そのうちの何校かは入試日と生理日がぶつかってしまい、また、運よく生理日とぶつがらなかった試験でも、下痢や頭痛がひどく結局合格できなかった。「それは、困ったねえ。そういうこと誰かに相談してみたことある)たとえばお母さんとか、お姉さんとか」「私は1人っ子なので、相談するとしたら母ですが……」それからSさんは母親について語りはじめた。母親は短大卒業後、銀行に勤め職場の同僚だった父親と結ばれ結婚退職した。Sさんを出産後、子育てと家事に従事した。パートをすることも考えたが銀行員の夫は転勤が多く、また、夫の考えもあってパートをしたことはない。現在は、夫が単身赴任中で、Sさんと二人暮しをしている。「結婚しても会社を辞めるんじゃなかった。S子はお母さんみたいになってはいけない。女も手に職をつけなければ」というのが母親の口癖だった。小さい頃から、そんなことを聞かされて育ったSさんが、将来、なりたいものは、母の望みどおり「公認会計士」だった。昨年の入試の時も経営学科がある経営学部や商学部を受験しようと思ったのだが、母親は「会社に入るためには、つぶしがきく経済学部にしなさい」と反対した。結局、経済学部を受験することになった。近頃では、Sさんは、生理中ではない時でも、イライラしたり、悲しくなったり、気力がなくなったりと気分が不安定で、勉強に集中できなくなった。生理中はともかく、生理でない時も調子が悪いとなると、勉強の効率はかなり下がってしまう。そこで、Sさんはクラス担任からすすめられカウンセリングルームを訪れたのだ。